行政書士ときた事務所鴇田雅人の起業家インタビュー（成功談・失敗談）

起業家になったきっかけは？: 私は52歳で30年勤務した食品メーカーを退職することを決めたとき、この後の人生では、誰の役に立ちたいのか、どう生きたいのか、とことん考えましたが、答えは「顔の見える地域の方々のお役に立てる仕事がしたい。」「家族のこと、故郷秋田のこと、趣味の音楽、これら自分にとって大切なものを犠牲にしない人生を組み立てたい。」ということでした。
その為に、地域密着のイメージが強いこと、雇われない独立開業型の資格であることから、行政書士という資格を取ることを考えました。
実は行政書士の仕事がどんなものか、ほとんど知らずにこの世界に飛び込みました。結果的には、業務の領域が非常に幅広い行政書士は、いわば”街の総務部”とも言えるような仕事ですので、30年間の会社員時代の大半を総務人事畑で生きて来た自分に合っている仕事だと感じています。
どんな仕事をしている会社ですか？: 現在は、地域のお客様を中心に、会社設立、補助金申請、営業許可の取得などのサポートをしています。また、不定期ですが区役所の一般相談員もさせて頂いています。
2020年は、コロナウイルス感染拡大、緊急事態宣言、外出自粛、営業時間短縮と、前職でお世話になった食品業界の方々も大変な状況に置かれることになりましたが、今現在、私の仕事としては、外食店、専門料理店、割烹料理店、スーパーマーケット等、地域の食品関係の事業者様のサポートが多くなって来ており、不思議なご縁を感じています。お世話になった業界と地域へのご恩返しと考えて、自分のライフワークとして、地元足立区が元気を取り戻すために、少しでもお役に立てれば幸せなことだと思っています。
成功談を聞かせてください！: 行政書士の大きな魅力は業務の分野が非常に幅広いことです。開業当初、私は、全方位作戦といいますか、何でもやるという考え方で、日々あれこれと勉強しながら、仕事が来るのを待っているような状態でした。
しかし、なかなかそれだけでは上手く行かず、開業から数か月後に自分は誰のお役に立ちたいのか？を、改めて真剣に考え直しました。その結果、まずは地域の中小事業者や起業家のお役に立ちたいという考えに至り、様々な場面での自己紹介文などに「得意分野は中小企業支援です！」と書いてみました。やってもいないのに、です（笑）。程なく、先輩行政書士の目に留まり、「それなら」と、補助金申請サポートの仕事を紹介して頂くことが出来ました。思えばこれが、大きなターニングポイントでした。それからは、依頼された仕事は断ったりせず、とにかく一生懸命やることを心がけました。
まだまだ成功と言えるものはありませんが、一度立ち止まって自分がやりたいことを示せたこと、目の前の仕事を断らずに一生懸命やってきたこと、は当たり前のことですが、とても重要な意味を持っていたと思います。
失敗談を聞かせてください！: 私は、全方位作戦をとりながら、開業から半年以上全く仕事を取ることが出来ませんでしたが、その間、問い合わせすら無かったわけでは無く、たったの2件ですが事務所の電話が鳴ったことがありました。その際、その仕事の問い合わせに対して、自信が持てずに、自ずとお断りする方にと話を進めてしまった自分がいました。今思うと、情けなく、恥ずかしく、悔しい思いがします。これが、開業してからの最大の失敗だと思っています。
これから起業する人に向けてメッセージをお願いします！: 松尾芭蕉の俳諧理念から転じて経営訓となった「不易流行」という言葉があります。私はこの言葉が起業家、経営者にとって非常に重要な意味を持っていると思います。
その意味するのは、「不易」すなわち”絶対に変えることのないブレない軸”、「流行」すなわち”環境変化を敏感に感じ取り変化できる力”、この二つを併せ持つことが重要であるということだと思います。
そして「不易流行」には、流行（変化すること）こそ不易（変わらないこと）の本質であるという考え方もあります。真に求められているのは、”時代に合わせてお客様の欲望の変化を理解し、満足を提供し続けられる経営者”である、ということだと思います。
つまり、起業家に求められるのは、強い信念を持ちながら、常に顧客志向であること、であると私は思います。